為替ヘッジをするとコストがかかるのはなぜ?
為替ヘッジの手段である為替予約や先物取引というのは、あらかじめ決められた為替レートで、将来のある時点(例えば1年後)に外貨を売ることまたは買うことを約束する契約です。問題はいくらのレートで予約ができるかということです。
たとえば日本よりも金利が高いドルで預金をして1年後に解約するとします。その1年間はドルの高い利息を受取れますから、あとは1年後にそのドル預金を解約して円に交換する時に、今と同じ為替レートでドルを売る契約ができれば、ドルの高金利分は「丸儲け」となるわけですが、残念ながらそんなにうまくはいかないのです。
為替予約の具体例でご説明しましょう。下の表をご覧ください。
(この例で使用している預金金利等は現実のものではありません。)
|
金利 |
現在 |
1年後 |
---|---|---|---|
円預金で運用した場合 |
0.8% |
10,000円 |
10,080円 |
ドル預金で運用した場合 |
5.0% |
100ドル |
105ドル |
現在の為替レート:1ドル=100円
元金:10,000円
1年物の円預金金利が0.8%、同じくドル預金金利が5.0%、今の為替レートが1ドル=100円だと仮定します。元金10,000円をそのまま円預金で運用すると、1年後には10,080円になりますね。一方10,000円を今ドルに換えると100ドルになり、それをドル預金で運用すると1年後には105ドルになります。
さて今、為替予約で1年後にドルを売る契約をします。もし仮に1年後の為替予約レートが今と同じ1ドル=100円のままなら、1年後に105ドルをそのレートで円に換えて10,500円が手に入ります。円預金で運用して得られる10,080円よりも、為替リスクなしで日米金利差4.2%分の420円を「丸儲け」できてしまいます。
このようなうまい話が放置されるはずはありません。当然、誰もが1ドル=100円で1年後にドルを売る契約をしようとするでしょうから、予約レートはドル安・円高になり、ドルで運用しても儲けが出ない予約レート、この場合は(10,080円÷105ドル=)96円で落ち着くことになります。
1年後のドル預金額 |
105ドル |
105ドル |
105ドル |
---|---|---|---|
1年後の為替予約レート |
100円の場合 |
98円の場合 |
96円の場合 |
1年後の円手取り額 |
10,500円 |
10,290円 |
10,080円 |
円預金で運用した場合(10,080円)との差額 |
420円 |
210円 |
0円 |
このように、円で高金利通貨に投資する場合に為替ヘッジをすると、今よりも円高な為替レートで将来にドルを売る約束をせざるを得ず、両通貨の金利差分だけコスト(ヘッジコストといいます)がかかってしまうのです。別のいい方をすれば、海外との金利差を犠牲にしないと、為替リスクの回避はできないということです。
ここでは、わかりやすさを優先して1年間で考えてみましたが、一般的にはもっと短期間、たとえば3ヶ月ごとに為替ヘッジを繰り返していく場合が多いのではないかと思われます。