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※2014/10/15現在

国旗ブラジル連邦共和国のご紹介

地図  

国名

ブラジル連邦共和国

首都

ブラジリア

面積

851万平方メートル(日本の約22.5倍)

人口

2億103万人(2013年)

人種

欧州系55%、混血38%

言語

ポルトガル語

宗教

キリスト教(カトリックが74%)

時差

日本-12時間(夏時間:−11時間)

格付

Baa2(Moody's)/BBB-(S&P)(2014/10/15)

  • ※外務省・JETRO、BloombergのデータをもとにSBI証券が作成

歴史と政治

年月

略史

1500年

ポルトガル人カブラルによる発見。

1822年9月

ポルトガルより独立。

1889年

共和制樹立。

1964年

カステロ・ブランコ軍事政権樹立。

1985年3月

民政移管(サルネイ政権)

1988年10月

新憲法公布。

1995年1月

カルドーソ政権樹立(ハイパーインフレの収束と経済安定)

2003年1月

ルーラ政権樹立(貧困の克服・経済成長の回復で前進)

2011年1月

ルセーフ大統領が就任。

基本的な特徴

ブラジル連邦共和国は世界で第5位の面積を有する国土、及び同第5位の人口を有する大国です。ラテン・アメリカ諸国の中で唯一、ポルトガル人により建国され、ポルトガル語が公用語(他はスペイン語)となっているのが特徴です。宗教は主にカトリック系のキリスト教が信仰されています。即ち、言語や宗教、文化の多様性等を原因とする国内紛争が起きにくい国と考えられます。二院制を基盤とする議会制民主主義国家で、大統領も直接選挙により選ばれます。ルーラ前大統領が、貧しい農村で生まれながらも、靴磨きやプレス工を経て、トップに上り詰めることができたことが示すように社会的流動性にも富んでいると考えられます。同大統領は退任直前でも87%と高い支持率を保持しましたが、大統領の三選禁止の決まりにより、2011年1月からは、同大統領と同じ労働者党からルセーフ氏が新大統領となりました。同氏はブラジル政治史上初の女性大統領です。

経済の概況

1貿易の特徴

ブラジルは豊富な資源を有する資源国です。特に鉄を生成する材料となる鉄鉱石については、世界で第3位の生産量(シェアは2010年・約15%)を有しています。その他、大豆やコーヒー、牛肉、鶏肉等の食品材料を含め、一次産品が輸出の41%を占めています。
もっとも、輸出に占める構成比の面では、工業製品が44%と、一次産品を上回っており、ブラジルを一次産品だけの国と考えるのも正しくないでしょう。OICA(国際自動車工業連合会)によると、ブラジルは2009年、年間で258万台の自動車を生産しており、世界第5位(第1位中国、第2位日本)の自動車生産国となっています。19の完成車メーカーと500を超える自動車部品メーカー(ブラジル財務省)を抱える自動車大国となっています。また、国内で販売される新車のうち、90%以上がフレックスカー(ガソリンとエタノールの両方を燃料とする)で、環境保全にも注力しています。
なお、国別輸出先としては、中国、米国、アルゼンチン等が大口となっていますが、上位8位以下のその他諸国が構成比で55%を占めるなど、分散化されています。一カ国・一地域の経済動向に振り回されるリスクは小さめであると考えられます。

23つの柱からなる経済政策

ブラジル経済政策の3本柱は、(1)インフレ目標の設定、(2)変動為替制度の採用、(3)財政規律の維持、となっています。
「インフレ目標」については、消費者物価上昇率4.5%を中心に、前後2%の範囲内で推移することを目指し、政策金利の決定を行っています。制度自体は1999年7月から実施され、近年の物価安定に貢献しています。また、為替制度については、為替バンドや誘導目標水準を設けない完全変動為替制度となっています。
財政規律については、財政赤字が膨らまないような諸制度が取られ、赤字は低めに抑えられています。一般政府債務の赤字規模は先進諸国と比べ低めとなっています。また、生産年齢以外の人口(従属人口)は2025年まで低下の見込み(ブラジル財務省)で、社会保証費負担が膨らむ懸念も、それ程大きくはないと考えられます。


3内需拡大が見込まれるブラジル経済


ブラジルの名目GDPは2010年で3兆6,074億レアル(約176兆円)と推計(IMF)されます。需要項目別の内訳は、同年上期までのデータ(IBGE:ブラジル地理統計院)でみると、家計消費62%、政府支出19%、固定資本形成18%で、輸出は11%(輸入を差し引いた純輸出としては赤字)となっています。ブラジルは資源国という印象が強い半面で、経済成長は内需主導となっているのが特徴です。
ブラジル経済の発展をテコに、同国では2004〜2010年に約1,400万人の雇用が創出されたと推計(ブラジル財務省)されます。さらに、ルーラ前大統領による貧困家庭向け支援プログラム(ボルサファミリア)等の効果もあり、2002年以降、約2,500万人が貧困層から中間層に移行したと推計されます。現在、ブラジルでは約1億300万人の人々が中間層に属しているとみられ、これらの人々に支えられた個人消費の拡大は、ブラジル経済に安定をもたらしていると考えられます。
一方、総固定資本形成(民間企業による設備投資や公共投資等)も、当面のブラジル経済に成長をもたらすとみられます。2014年にFIFAワールドカップ、2016年にはリオデジャネイロ五輪の開催が予定されている上、政府による成長加速プログラム(PAC)もあり、今後も国内では大規模インフラ・プロジェクトが目白押しです。2011年以降のPAC2だけでも日本円で約78兆円前後の投資が計画されています。今後、公共投資については、GDP比で3〜4%の割合を維持して行くものと予想(IPEA:ブラジル応用経済研究所)されています。

ブラジル経済の現状

1景気の現状

  • ※Bloomberg、IBGEのデータをもとにSBI証券が作成
需要項目別の実質GDP成長率(前年同四半期比・%)

四半期終了
年月

GDP

家計
消費

政府
支出

総固定資本
形成

輸出

06/12

4.8

5.0

5.2

11.5

5.3

07/3

5.2

6.2

4.9

9.1

5.6

07/6

6.4

6.0

7.8

14.0

12.8

07/9

6.1

5.6

6.5

15.9

1.2

07/12

6.7

6.6

1.8

16.1

6.2

08/3

6.4

6.0

4.5

15.8

-1.5

08/6

6.5

6.5

1.6

17.1

6.2

08/9

7.1

7.7

5.2

19.2

3.5

08/12

0.8

2.6

1.7

2.8

-6.2

09/3

-3.0

2.2

3.9

-16.2

-14.9

09/6

-2.8

3.0

3.6

-17.1

-11.0

09/9

-1.8

4.3

1.2

-12.9

-10.5

09/12

5.0

7.2

6.7

5.7

-4.7

10/3

9.3

8.4

2.7

28.4

14.7

10/6

9.2

6.4

5.6

28.1

7.2

10/9

6.7

5.9

4.1

21.2

11.3


ブラジル経済は、リーマン・ショック後の2009年第1四半期から同年第3四半期にかけ、総固定資本形成や輸出の落ち込みを背景に、実質GDP(前年同四半期比)がマイナス成長となりました。しかし、中間所得層の拡大やローン市場の成長を背景に個人消費が下支え役となり、総固定資本形成の回復もあって、2009年第4四半期以降は、プラス成長に転じました。2010年第1四半期には、実質GDPが前年同四半期比で9.3%も成長し、1995年第1四半期に記録した、同10.1%成長以来の高い成長を記録しました。
しかし、高い経済成長により、国内生産余力が低下してきたことや、2009年3月以降のレアル高(対ドルは同月1ドル2.4レアル台から2010年には同1.6レアル台まで上昇)も手伝い、経常収支は赤字が定着し始めています。また、インフレも問題視され始めており、金融政策は引き締めに転じています。それらの効果もあり、2011〜2012年のブラジル経済は、成長率が2010年に比べ、減速してくる可能性が指摘されています。

2金利・インフレと通貨(ブラジル・レアル)


ブラジルの通貨はレアルです。レアルの対円相場は2010年末が1レアル49円弱で、09年末53円台半ばから、レアル安・円高となっています。一方、レアルの対ドル相場は2010年末が1ドル1.66ドルで、09年末比ではレアル高・ドル安となっています。
レアルの魅力は金利の高さとなっています。ブラジルの2年国債利回りは2010年末で年12%台ですが、トルコやインド、南アフリカ等の10年国債利回りは年7〜8%で、同じ新興国との比較でも高めとなっています。インフレ率(消費者物価上昇率)を差し引いた実質金利も年6%以上(2010年末)あり、上記の国々に対する金利面での優越性を維持しています。この金利面での魅力が維持されることは、レアル相場のプラス要因となります。
ただ、金利面での魅力がレアル相場の上昇につながった結果、ブラジルの輸出産業に悪影響が出ています。このため、ブラジル政府及び金融当局は、過度で短期的な資本流入を抑制すべく、資本規制を打ち出すようになりました。この点は、今後ブラジル債に投資する上でのリスク要因になりそうです。また、雇用を含めた国内生産余力の低下から、今後はインフレ率(消費者物価上昇率)の高進リスクが高まる可能性があります。インフレ率の上昇は、実質金利の低下要因であり、通貨にマイナスとなることがあります。これらの点はレアル相場のマイナス要因となりますので、十分なウォッチが必要かと思われます。

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